ロートアイアン豆知識

塗装仕上げの考え方

近代的建築とクラシックな門扉との取り合わせ(ロンドン)

 ロートアイアンの表面仕上は基本的に塗装です。現在ではサビ止めのための表面処理(下地メッキや下地塗装など)を施した後、さらに上塗り塗装で色を付けるのが一般的で、塗料の種類や性能、塗装の方法、乾燥方法により、さまざまな選択肢があります。レッキーメタルではパーツを組上げた後、溶融亜鉛メッキ、焼付塗装仕上げをするのを標準としています。
 上塗塗料は、塗色による強度や耐久性の差はありません。昔から黒色が非常に多く使われ、鉄は黒、黒光りする鉄、のイメージををお持ちの方も多いでしょう。黒は無彩色で明度が低いため、どんな場所で使用しても周囲と馴染みやすいのと、合成塗料が出回る以前はコールタールが使われていた経緯があるようです。しかし、せっかくたくさんの色を選択できるのですから、上手に利用して雰囲気にピッタリの塗装色を見つけてみてはいかがでしょう。

黒色はコールタールを塗った時代からの伝統色。
剣先の塗分けは定番で、どこでもよく見かけます。
ホワイト系をベースに装飾部を金色に塗分けた赤坂迎賓館正門。

■ 単色塗装の塗色
 最も一般的な塗装仕上です。ロートアイアン製品のすべての部分を、ある1色で塗装します。コストもかからず塗り直しの時も楽です。
 原色系の色に黒色や白色を混ぜて彩度を落とした色を使うと、大抵の場所で違和感なく使えます。さらにつや消し剤を混ぜると、当初から落着いたイメージが出ますが多少塗膜が弱くなるとされています。屋外ではツヤはすぐ落ちますので、無理にツヤ消しにすることもありません。

明るめのブルーのフェンスと門扉。
白色を混ぜてシックに。
ビビッドなパープルのフェンス。
ダークグリーンの小さな門扉。
蛇行する白いフェンス。
ホワイト系は華やかな雰囲気に。

■ 塗分け塗装
 剣先やローゼット、葉などのパーツを塗分けて華やかさを出す仕上です。門扉やフェンスなどでは、金色や銀色に塗分けられているのをよく見かけます。多くの場合、まず全面に基の色を塗装した後で、乾燥後手作業で目的のパーツだけ別の色を塗り重ねます。パーツ同士の境目をうまく塗分けるのがコツとなりますが、ロートアイアンの本場イギリスなどでも結構おおらかに塗分けられていたりします。

ダークグリーンとシルバーの塗分けの門扉。
黒色を基に植物パーツなどを金色にしている。
パーツの他、レールのサイド凸面も金色塗分け。
剣先をシルバーで塗分け。

 動植物をモチーフにした看板や家具などには、あたかも立体の絵のように塗分けて、葉や花をリアルに表現したものも見受けられます。

赤いバラをハート形にあしらっています。
フルーツの集合体。アームはブドウ唐草。
パーツをゴールドで塗分け。
スクリーン(衝立)の例

■ エイジング塗装
 古美(フルビ)塗装と呼ばれることもあります。長い間使用していて塗装が取れて金属の素地が見えてきたり、逆に磨いてあった金属の手の触れない所が黒ずんだり酸化して色ムラになっている感じを塗装で疑似的に表現する技法です。
凹凸のある材料やパーツを使用した製品のほうがうまく表現できます。

銅合金のサビであるロクショウを塗装で表現。
アミューズメント施設での鉄サビを模した塗装。
レッキーメタル製バラ唐草パネルを緑青色、銅色、金色を別けてエイジングしたもの。